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フォト_ギャラリー

2016年6月15日 [ 第236回 ]

 トキ

 

 

 トキ(夏羽) Japanese Crested Ibis Nipponia nippon

 分類:ペリカン目 トキ科

 全長:77.0cm

 翼開長:133.0cm

 分布:野生絶滅。

 生息環境:水田、湿地など。

 食性:魚類、甲殻類、貝類、水生昆虫など。

 レッドリスト:野生絶滅(EW)

 指定:特別天然記念物

 フォトギャラリー:初登場

 撮影難易度:―――――


 撮影日:2016年5月14日

 撮影時間:16時59分41秒

 シャッタースピード:1/3200秒

 絞り値:F5.6

 撮影モード:マニュアル

 焦点距離:300mm(換算450mm)

 ISO感度:400

 撮影地:石川県

 使用カメラ:NIKON D5100

 使用レンズ:Nikon AF−S NIKKOR55−300mm 1:4.5−5.6G ED VR


 撮影日:2016年5月14日

 撮影時間:17時30分32秒

 シャッタースピード:1/1600秒

 絞り値:F5.6

 撮影モード:プログラムAE

 焦点距離:300mm(換算450mm)

 ISO感度:400

 撮影地:石川県

 使用カメラ:NIKON D5100

 使用レンズ:Nikon AF−S NIKKOR55−300mm 1:4.5−5.6G ED VR


 舳倉島へ行くのが目的で輪島入りした僕は全く思いがけずトキと出会う事になった。 民宿の女将さ んから輪島市内(本土側)にトキが居ると聞いたのは寝耳に水だった。 聞けば去年からここに住み着 いているそうだが全く知らなかった。 日本地図を眺めながら将来佐渡島から能登に飛来してもおかし くないなぁと思った事は有ったが、まさかこんなに早く現実のものになるとは思わなかった。 2日目の 夕方舳倉島から輪島市内の宿に戻ると、目撃例が多いという水田地帯のポイントまで宿の人が車で送 ってくれた。 トキが目当てなら佐渡島へ行けば良いのだろうけど、ここに居るなら狙わない手は無い。  しかし相手は約束通り姿を見せてくれる訳ではない。 水田地帯は視界が広い様に見えて畦道の段 差など意外に死角が多い。 農道を歩き回っているとお百姓さんが親切に声をかけてくれた。 いろい ろ情報をもらい日没近くまで頑張ったがその日はトボトボと宿へ帰らざるを得なかった。 現地でたまた ま出会ったトキ狙いのご夫婦と奇遇にも割烹料理屋で再会し、翌日はその人達と行動を共にする事に した。
 そして翌朝、僕は夜明け前に宿から這い出し30分ほど歩いて再び現地へ向かった。 この朝も空振 りだったが犬の散歩をしていた女性が、このポイントにはたまに朝と夕方飛来し畦道を歩きながら採餌 をする事、あまり高くない高度を飛び北の水浴び場方向から飛来する事、警戒心はさほど強くない事な どかなり具体的な証言をしてくれた。 チャンスはあとこの日の夕方と翌日の朝夕の3度ある。 ポイン トはここと水浴び場の2ヶ所。 水浴び場は好都合な事にフェリー乗り場への通り道沿いの川だ。 胸を 躍らせながら舳倉島へ渡るべくフェリー乗り場へ向かい昨日のご夫婦と合流した。 そして舳倉島で撮 影をしているとその方の携帯が鳴った。 輪島市内で連絡先を教えてあった人から今トキが来ていると の情報だった。 夕方まで待っていてくれと祈りつつ舳倉島で探鳥を続け、フェリーで輪島港に戻った 我々一行は気もそぞろに現地へ向かった。 現地に到着すると数人のカメラマンの姿が見えた。 あそ こにトキが居るに違いない。 もう確実に撮影出来ると思った矢先、そこに数人の子供たちが駆け寄る のが見えた。 嫌な予感は的中し案の定トキは飛び立ってしまったが幸い少し近い所に降りてくれた。  その方向へ歩いて行くとようやく田圃の真中に主人公の姿が見えた。 脅かさない様にゆっくり近付 く。 充分な距離を保って撮影を始めると採餌しながらじわじわと僕の方へ近付いて来て最接近時は1 0mほどの至近距離まで寄って来た。 身動きが取れないくらい近い。 極力警戒されない様にしゃが んで撮影した。 一部図鑑によれば夏羽の頸、背、雨覆などが黒ずんでいるのは顔の皮膚が粉状に剥 がれた黒い色素を塗りつけるかららしい。 よく見ると足環のほか背にはGPS発信器らしきものが見え る。 野外巣立ち個体ではなく放鳥個体である事が分かる。 人慣れしているのも道理だ。 痛恨の極 みだが、誰もが知っている通り日本産トキは絶滅してしまった。 この発信器もその現実を思い出させ てくれる。 レッドリストでは日本の鳥類で唯一の「野生絶滅」だ。 日本で完全な野生の姿を撮影する のはもはや事実上不可能だから撮影難易度も星の付けようが無い。 たった1羽でここに居ては繁殖 のチャンスは無いが、ひとたび放鳥したからにはどこへ行って何をしようがトキの自由に任せるしかな い。
 かつては日本中の空を飛んでいたであろうトキ、もし我々の先祖が野鳥ファンだったら「今日の探鳥 はどうだったぁ?」「駄目〜、トキしかおらんかったわー」などと会話していたかも知れない。 いろいろ 意見は有ると思うがその絶滅の主な要因の一つは2枚目の写真の通りその美し過ぎる朱鷺色の羽だ ろう。 翼を閉じている時は隠れていた羽色だがトキがひとたび羽ばたくと傾きかけた西日が透過して 美しく映えて見えた(初列風切の一部は換羽途中と思われる)。 かつて外貨獲得が国策だった時代、 この羽を得る為に捕獲されていたのは厳然たる事実だ。 食性や体格の類似したアオサギやダイサギ が繁栄しトキだけが絶滅した原因は生態系の破壊だけでは説明がつかない。 人間界にどういう事情 が有ったにせよ絶滅させてしまっては元も子もないのであって、自然界を私物化しようとして結局自分 たちの首を絞めている構図だ。 トキに「次」は無い。 手遅れになってから保護しようとするから無理 が生じる。 野鳥ファンならば誰しも同じ思いだと思う。 我々人間は肝に銘じなければならない。 この 美しい羽は野に在ってこそ、こんなにも美しいのだと。



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