フォト_ギャラリー

2013年08月20日 [ 第119回 ]

 ライチョウ

 

 

 

 ライチョウ(上=雌、中=雄、下=雛)

 分類     :キジ目 ライチョウ科

 全長     :36.0cm

 翼開長    :59.0cm

 分布     :日本アルプスなど局地的に留鳥。

 生息地    :高山帯のハイマツ林など。

 食性     :雑食/種子、芽、昆虫など。

 レッドリスト :絶滅危惧TB類(EN)

 指定     :特別天然記念物

 DATE(撮影日) :2013年8月14日

 TIME(撮影時間) :11時51分52秒
                      11時44分04秒
                      08時20分36秒

 SHUTTER(シャッタースピード) :1/160秒 1/250秒 1/250秒

 APERTURE(絞り値) :F16(絞りはF8)

 EXPOSURE MODE(撮影モード) :MANUAL

 FOCAL LENGTH(焦点距離) :1000mm(換算1500mm)

 ISO(ISO感度) :400

 撮影難易度  :★★★★☆

 フォト_ギャラリー:初登場

 使用カメラ  :NIKON D5100

 使用レンズ  :NIKON Reflex−NIKKOR・C 1:8 f=500mm
           NIKON Teleconverter TC−201 2×

 撮影地    :富山県

 お盆休みを利用して立山へライチョウを見に行って来たが、思ったより苦戦した。 事前に仕入れた 情報が乏しく、山に登るのさえすんなりとは行かなかったが、四苦八苦しながらも何とか想定以上の撮 影をする事が出来た。
 初日、マイカーで早朝大阪を出発した僕は昼前には富山に到着していた。 富山市内に予約した宿 にチェックインするには早過ぎる時間だったから、長距離運転の疲れを癒す間も無く下見を兼ねて行 ける所まで行ってみようと思い、その足で立山に向かった。 ところがマイカーで行けるのは富山地方 鉄道の終点立山駅の所とその先の称名滝まで、それより上へ登るには立山駅からケーブルカーと高 原バスを乗り継がねばならない。 聞けばケーブルカーに乗れるまでの待ち時間が約1時間という混雑 ぶりだった。 駅周辺の駐車場も満杯に近いし時刻も中途半端だったのでやむなくその日は諦めて、 行先を称名滝に変えた。 ここにはイワツバメしか見当たらず、落差350メートルの滝の迫力に当初 の目的を忘れて風景写真ばかり撮影した。 夕方、富山市内に戻ってリサーチした結果、富山地方鉄 道の電鉄富山駅から立山の室堂まで電車・ケーブルカー・高原バスの通し切符を買えば待ち時間がほ とんど無い事を知り、翌日は車を宿に置いて明け方の5時過ぎに切符売り場へ足を運んだ。 他の乗 客は登山客がほとんどで野鳥ファンらしき人の姿は僕の他には見当たらなかった。 春に舳倉島へ行 った時は釣り客よりもバーダーの数の方が圧倒的に多かったのと対照的だ。 のどかな早朝の田園風 景の中を列車は走る。 前日に車で走った道と並行しながら、やがて渓谷の真っ只中の川沿いに入 り、ほどなくして立山駅に到着した。 駅に降りると成る程すぐにケーブルカーに乗り継ぎ出来た。 僅 か7分ほどで標高475メートルの深い谷底から977メートルの美女平へ一気に駆け昇る。 そこから 更に高原バスに乗り換え、巨木の森を抜けていよいよ森林限界より上の雄大な景色の中、マイカーの 規制された立山黒部アルペンルートをぐんぐん登って行く。 伊吹山の様にガードレールの向こうは断 崖絶壁みたいな道を想像していたが、そういう箇所はほとんど無くて、ラムサール条約湿地に登録され ている弥陀ヶ原高原の湿地帯をバスは走る。 ここにも野鳥たちが居るだろうなと後ろ髪を引かれる思 いで車窓から目を凝らす。 途中下車は可能だが、主目的はライチョウなので、一気に標高2450メー トルの室堂まで登った。 晴れていても気温は15度ほど、気圧は平地の約75%だから下手をすると 高山病に罹る高所だ。 飛行機に乗って高度1万メートルを飛んだのを別にして人生で最高所に降り 立った僕は、眼前に聳え立つ3000メートル級の堂々たる立山連峰の圧倒的な岩肌を見上げ、いつか はあそこに登りたいなと夢見た。
 まだ朝早く、情報を仕入れようと思っていた「立山自然保護センター」は開いていなかった。 仕方無く 曖昧な情報だけを元に広大な高原の遊歩道を当てずっぽうに歩き始めた僕はハイマツ林の見渡せる 場所にカメラを据えて目を凝らし続けた。 春には雄が縄張りの見張りの為に岩の上に立つので比較 的たやすく見られるというライチョウは、この時季はなかなか姿を見せてくれない。 猛禽類の飛ぶ晴天 の日を避け雷の鳴る様な悪天候の日を選んで出て来る事から「雷鳥」と名付けられたと言われる通り、 天気が良過ぎたせいで、どこにも姿が見えない。 しかし折角ここまで来たからには手ぶらで帰る訳に はいかない。 少しずつ焦りの気持ちが出て来た僕は思い切って場所を変えてみる事にした。 そして ミクリガ池展望台に立ち寄り、そこも見切りをつけて移動しようとしたその刹那、誰かが「居た居た!岩 の所!」と叫ぶのが聞こえた。 展望台の向かいの斜面にチラッと黒っぽい姿が見えた。危うく諦めて 立ち去る寸前だった。
 後から分かった事だが、そこは出現率の高いポイントだった。 ここに掲載するのは翌日も同じ手間 を掛けて登った同所で撮影したものだ。 朝8時から昼の12時まで4時間の間に少なくとも雌2羽、雄 1羽、雛2羽を確認し、「立山自然保護センター」でライチョウ観察記念シールを貰う事が出来た。 雌 の写真は下山する間際の最後の最後に最も近距離からシャッターを切った1枚だ。 このポイントは登 山者や一般旅行客の休憩所にもなっているので、撮影をしていると人だかりが出来て「ライチョウが居 るんですか」と頻繁に声を掛けられた。 この時季のライチョウ、特に雌の夏羽や雛は完璧な保護色 で、岩と同じ色で風景に同化して溶け込んでいるから肉眼で発見するのは至難の技だ。 場所を教え てあげても一般の人にはなかなか見つけられない。 一見すると何も居ない様に見える斜面に「いま見 える範囲に3羽居ますよ」と言うと驚く人も居た。 キジバトよりやや大きい程度だから、もっと大きいイ メージなのが思ったより小さいので余計に見つけにくいのかも知れない。 やっと見つかると小躍りして 喜ぶ人も居た。 どうしても見つけられない人や子供には僕のカメラのファインダーを覗かせてあげた。  夏休みのいい思い出になっただろうか。 ポケットカメラなどで撮影を試みる人も多かったが、慣れな い人には厳しい撮影条件だっただろう。 他にも野鳥ファンの姿はちらほら見受けられたが同様に苦 戦している様子だった。 登山者の中にも初めて見たという人が居たが、なるほどこれでは近くに居て も気付かないはずだと納得しておられた。 岩山の中からライチョウを探し出したり人に教えてあげたり するのは、それはそれで楽しかった。 こんなきっかけから少しだけでも野鳥ファンが増えたのなら幸い だ。
 立山には日本で唯一の氷河が現存しており、日本アルプスのライチョウは氷河期に分布域を広げた 個体群の生き残りの子孫とされる。 英語に直訳するとイギリスの有名な人形劇番組のタイトルになっ てしまうが、そうではなくて正しい英名はRock Ptarmiganと言う(Pは発音しない)。 雄の目の上には赤 い肉冠(皮膚の裸出部)が有るが、これがほとんど無い雄や、逆に僅かながら赤い部分の有る雌も居 るとの事だった。 雛が見られる時季は限られているし小さいから観察するのは難しい。 幸い分かり 易い所に出て来てくれた瞬間を撮影した。 この雛の親鳥と思われる雌は掲載写真の雌とは別に居た から、この写真の雌と雛は親子ではない。 人間に対する警戒心は強くない様だったが、雄は臆病な のかハイマツ林の中からなかなか出て来なかった。
 こうなると後は雪山で純白の冬羽を撮影したくなる。 人間の欲望には際限が無いのだろうか。 余 談だが、山上で空になったペットボトルのキャップを閉めて下山すると気圧の違いにより柔らかいペット ボトルは凹む。 この様な高山に棲むライチョウから見れば下界の人間など深海魚みたいなものだろう と言えば深海魚に怒られるだろうか。



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